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表面処理とは?皮膜、加工方法の種類と用途の基礎知識を解説

〈目次〉
1,表面処理とは
2,表面処理皮膜が担う機能性
3,表面処理をする対象となる素材
4,表面処理を利用するメリット
5,表面処理加工方法、用途
6,Q&A
7,表面処理(目的・性能別)

表面処理とは

表面処理とは、材料の表面を加工することです。表面処理によって、腐食や摩耗、化学反応、紫外線などから材料を守り、寿命を延ばすことができます。また、色や光沢などの美しい外観を与えたり、滑り性や耐摩耗性、離型(非粘着)性などの特性を付与することもできます。

代表的な表面処理には、めっき加工、塗装、コーティングなどがあります。

日常生活において表面処理の主な機能
対象 方法 機能
自動車 ワックス、コーティング 撥水、UVカット
雨具類 コーティング 防水、撥水
スマホ、PC コーティング 指紋が付きにくい、汚れが拭き取りやすい
フライパン、鍋 コーティング 付着防止、洗浄性UP
シャンプー等詰替え内側 コーティング 液残りが出やすい
アルミサッシ、ノブ コーティング 腐食防止、美観、傷つき低減
スプーン、フォーク 装飾、コーティング 美観、金属アレルギー対策

表面処理皮膜が担う機能性

機能 目的
装飾性 光沢、色調、模様
防錆、耐食性 腐食延命、防止、電食対策
耐摩耗性 摺動摩擦、抵抗摩擦、かじり摩擦、ころがり摩擦
機械的強度 硬度、潤滑、型離れ、再生、低摩擦性
電気的特性 絶縁性、導電性、抵抗性
光学特性 反射、吸収性
化学的特性 耐薬品性、殺菌性、金属イオン溶出防止
熱的特性 耐熱性、熱伝導性、熱吸収性、熱反射性
物理的特性 接着性、グリップ性、濡れ性

これらの機能性は、使用する素材や目的に応じて適切な表面処理皮膜を選択することで、製品の品質や性能を向上させることができます。

表面処理をする対象となる素材

鉄、鋼(S45C、50C、SS400、SKD、SKH、SPCCなど)
利点:硬く頑丈で、さまざまな形状や手法で加工できます。また、熱処理によって硬さや性質を調整することもできます。
欠点:錆びやすい。

ステンレス鋼(例:SUS304、303、316、SUS440C、SUJ2など)
利点:錆びにくく、鉄に近い強度を持っています。
欠点:完全に錆びないわけではないので、注意が必要です。

アルミニウム(例:A5052、5056、2017、7075、ADCなど)、マグネシウム合金、亜鉛マグネシウム合金(超々ジュラルミン)、アルミダイカストなど
利点:軽量で熱伝導率が良く、磁気を帯びにくい。
欠点:柔らかい。

(例:純銅、青銅、黄銅、銅ニッケル合金、ベリリウム銅など)
利点:軽量で熱伝導率が高い。
欠点:柔らかく熱に弱い。

樹脂(例:PVC、ABS、PC、PTFE、PFA、MC、PA、PB、PBI、PP、PEEKなど)
利点:軽量かつ安価で着色も自由度が高く、装飾にも適しています。
欠点:熱や衝撃に弱い。
※機械的強度や耐熱性、耐薬品性に特化したエンジニアリングプラスチックなどもあります。

ゴム(例:NBR、CR、EPDM、SI、NR、FKM、UR、H-NBRなど)
利点:クッション性があり、パッキンなどのシール目的や衝撃緩和に適しています。
欠点:耐久性が環境によっては弱い。

他には、超硬材やチタン、ハステロイ、ジュラルミン、銀、金など、様々な素材があります。

表面処理を利用するメリット

様々な製品の製造工程や設備、環境において、表面処理によって解決できる問題の例

・物の表面にくっついてしまうこと。(付着、滞留、居着き)
・表面が削れてしまうこと。(摩耗、破損、塑性変形など)
・製品の滑りが悪く、詰まりが発生したり、設備部品間の摩擦抵抗によって不具合が起こること。
・滑りやすくて製品をつかみにくいこと。滑って危険な状態になること。
・静電気の放電によって引き起こされる問題。(張り付く、スパーク など)
・薬品などによる腐食や、錆および電食による腐食が発生すること。

表面処理を利用するメリット

上記のような様々な製造工程や設備、環境で起こる問題を解決するには、設備や装置の見直し、レイアウトの変更、素材の見直し、生産時間の調整、工程の見直しなどが必要です。しかし、これらの改善には手間や予算、計画や生産調整によるコストがかかるため、実行が難しくなることがあります。
そのため、現在の状態で表面処理を行うことで、ひと手間かけるだけで課題や問題点を解決することができます。

表面処理加工方法、用途

めっき(湿式めっき)

めっき(湿式めっき)とは、金属や非金属などの対象物の表面に金属の薄膜を被覆させる表面処理加工方法の一種です。

電気めっきは、電気の力で酸化還元反応を発生させ、めっきを行います。
無電解めっきは、化学反応を利用することでめっきを析出させます。

用途
・装飾めっきは見た目を美しくします。
・防食めっきは材料の錆を防ぎます。
・機能めっきは電子機器の部品や設備品などに機能性を持たせるために利用されます。 ・金属にめっきを施すことで、耐摩耗性を向上させることができます。また、滑りや離型性を付与することも可能です。

蒸着(乾式めっき)

蒸着(乾式めっき)とは、対象物の表面に金属や酸化物などを蒸発させて、薄膜にした状態で付着させる表面処理加工方法の一種です。

物理蒸着(PVD)は、物理反応を利用して材料を蒸着させる方法です。この方法は、切削工具やCDのアルミ蒸着などに使用されます。
一般的に「真空蒸着」とは、物理蒸着の一種であり、真空中で材料を加熱して蒸発させて蒸着を行う方法を指します。そのため、「蒸着」と言った場合には、真空蒸着を指すことが一般的です。
化学蒸着(CVD)は、化学反応を利用して材料を蒸着させる方法で、半導体の製造や合金向けの蒸着に使用されます。この方法を使うことで、金、銀、アルミニウム、クロム、亜鉛などの材料を薄膜状に加工し、製品にコーティングすることができます。
化学蒸着は、さまざまな材料を使うことができるため、多様なコーティングに応用できるのが大きな特徴です。

用途
・ドライ潤滑条件での摺動摩耗性や低摩擦係数を持つため、潤滑や防錆に利用されることがあります。
・光学薄膜として、メガネや特殊ミラー、レンズの反射防止膜などに利用されます。
・磁気テープの磁気膜として、オーディオテープやビデオテープなどに使用されます。
・電子機器のディスプレイ、半導体集積回路などの製造に用いられます。具体的には、プラズマディスプレイ、有機EL、液晶ディスプレイ、携帯電話のディスプレイ表面、本体装飾コーティングなどに利用されます。
・食品包装材として、アルミ蒸着フィルムなどが使用されます。
・ファッション素材などにも利用されます。

塗装

塗装とは、対象物の表面に液体、粉末、またはスプレー状の材料を塗布して、外観を改善する、または保護するための表面処理加工方法の一種です。
めっきとは違い、常温・大気下で塗布できるため、コンクリート、金属、プラスチックなど、さまざまな素材に適用することができます。
ただし、めっきに比べると強固な被膜になりにくいため、注意が必要です。

用途
・外観の改善
・防錆、防食、防腐、防水
・機能性の向上(例:摩擦係数の低減、耐熱性の向上)
・耐久性の向上
・防カビ、防汚性の向上(衛生的な目的)

コーティング

コーティングとは、塗装の施工方法を活用し、生産設備や場合により生産品に機能性を持たせたり、付加価値をつけるための表面処理方法です。
一般的に、下地にアンカー効果を持たせるためにショットブラストやサンドブラストを使用し、場合によってはめっきを施します。この凹凸面やマイクロクラック面に、フッ素樹脂、シリコン系、セラミック、PEEK材などを粉体塗装や液体塗装で塗布し、高温焼成することでコーティングが形成されます。また、高温を適用できない精密部品やデリケートな部品には、従来の下地処理や高温焼成をせず、重合反応やプラズマ前処理を用いて、母材を損傷させずにコーティングが施されるケースも増えています。

用途
・撥水性や撥油性の付与
・親水性を持たせたい
・離型性を良くしたい
・滑り性の向上
・グリップ力を持たせたい

陽極酸化処理

陽極酸化処理とは、一般的にはアルマイト処理として知られています。この表面処理加工方法は、アルミニウムを電解処理して表面に酸化被膜を生成する方法です。
アルミニウムは酸素と結びつきやすいため、元々薄い酸化被膜が生成されますが、その膜は環境によっては機能しなくなることがあります。そこで、より高い耐久性や耐摩耗性、撥水性、電気絶縁性を持つアルマイト処理が使われます。

用途
・装飾効果(例:高級筆記具、金属食器、自転車やカメラの部品)
・耐食性の向上(例:軍用・航空機用部品の表面処理)
・機械的特性の改善(例:摩擦係数の低減、電気絶縁性の向上等)
・医療用具や電子部品などの防蝕処理

表面硬化

表面硬化とは、鋼に対して表面を硬化させる処理方法で、鋼独特の靭性を持たせたまま、表面だけを硬化させることを指します。
主な手法としては、浸炭や窒化処理、高周波焼き入れなどがあります。これにより、鋼の耐摩耗性や疲労強度などが向上し、多くの鉄鋼製品に採用されています。また、拡散浸透処理などの高機能な技術も存在し、表面の機能性を高めることができます。

用途
・機械部品や工具の耐摩耗性の向上(例:歯車や軸受けなどの機械部品、刃物やドリルなどの工具の表面処理)
・耐腐食性の向上(例:船舶や自動車の部品、建設資材、電気製品などの表面処理)
・疲労強度の向上(例:航空機部品や自動車のエンジン部品、高速鉄道の車両部品などの表面処理)
・機能性の向上(例:摩擦係数の低減や電気絶縁性の向上、磁気特性の変化)

熱処理

熱処理とは、鋼を硬くするための表面処理加工方法の一種です。鉄鋼製品の表面にさらに熱処理を行うことで、耐摩耗性や疲労強度、潤滑特性などを改善し、表面の強度を高めることができる表面処理です。

用途
鋼材の物性を改善することで、硬度、強度、靭性、耐摩耗性、寸法精度などを向上させることができます。これにより、自動車や航空機、建設機械、電子部品など、様々な分野で使用されています。

溶射

溶射とは、溶射剤と呼ばれる材料を加工物に吹き付けて皮膜を形成する表面処理加工方法の一種です。この技術では、金属やセラミックス、プラスチック、サーメットなどを加熱して溶融、またはそれに近い状態にし、加工物に吹き付けます。そして、粒子を凝固させて密着させることで皮膜を形成します。
溶射は、厚い皮膜を比較的簡単に形成でき、また現場での施工が可能であるため、橋梁や鉄塔をはじめとする大きな建築物の表面処理にも使用されます。

用途
・摩耗や腐食、熱などの外部要因から材料を保護します。
・部品や機械の修理にも使用されます。磨耗した部分を溶射皮膜で補修することで、部品の寿命を延ばすことができます。
・高機能皮膜を形成することで、機械部品やエンジン部品の性能を向上させることができます。例えば、燃焼器具の燃焼効率を向上させたり、自動車エンジンの燃費を改善することができます。
・塗料の代わりに塗装にも使用することができます。溶射皮膜は塗料よりも密着性が高く、耐摩耗性や耐腐食性に優れているため、橋梁や鉄道車両、大型建築物の塗装にも使用されます。

エッチング

エッチングとは、化学薬品などの腐食作用を使って対象物の表面を加工する表面処理加工方法の一種です。この方法は、銅や亜鉛はもちろん、腐食性のある材料にも対応できます。

用途
・銅版画や亜鉛版画の製造
・半導体チップや基板の製造
・金属表面に微細な凹凸や模様を形成することによって、金属の見た目を変化させたり、光沢感や質感を与えることができます。また、この凹凸や模様は表面積を増やすため、摩擦や腐食に対する耐性を高めることができます。

化成処理

化成処理とは、金属の表面を処理剤で覆い、化学反応を起こすことで、耐食性や塗料の密着性を向上させる表面処理加工方法の一種です。
この処理剤は、使用する金属によって異なります。たとえば、亜鉛やカドミウムめっきにはクロメート処理が、鉄にはリン酸皮膜処理や黒染めが用いられることがあります。

用途
金属表面の耐食性や塗料の密着性を向上。(例:自動車のボディ、エンジン部品、ホイール、食品加工機器や医療機器など)

研磨、ショットピーニング

研磨、ショットピーニングとは、表面処理加工方法の一種で、単に塗料や素材でコーティングしたり皮膜を生成するだけではなく、表面の洗浄や研磨、ブラストやショットピーニングによる表面の改質を行うことも含みます。

用途
研磨は鏡面仕上げや滑り性向上など、見た目や機能性の向上が求められる場合に用いられます。
一方、ショットピーニングは、機械部品や自動車部品、航空機部品などの高い強度が求められる部品に使用されることが多く、疲労強度を向上させたり、耐摩耗性を高めたりするために利用されます。
また、ショットブラストは表面のクリーニングや下地処理に用いられることがあります。

表面処理加工方法Q&A

めっきと蒸着との違いは何ですか?

めっきと蒸着は表面処理加工方法の一種であり、金属膜を形成して機能性を持たせることを目的としています。ただし、めっきは湿式めっきで、蒸着は乾式めっきであることが大きな違いです。
めっきは、電解めっきや無電解めっきなどの方法で、対象製品の表面に金属膜を形成します。この際、薬品や液に浸漬させて金属膜を形成するため、湿式めっきと呼ばれます。
一方、蒸着は、真空蒸着やイオンプレーティング、スパッタリングなどの方法で、金属を気化させて対象物に金属の皮膜を形成します。このため、乾式めっきと呼ばれます。

蒸着とスパッタリングの違いは何ですか?

蒸着とスパッタリングは、表面処理加工方法の一種であり、薄膜を形成する物理的薄膜形成技術です。ただし、蒸着とスパッタリングは加工方法が異なります。
蒸着は、真空中で皮膜を形成するために、蒸発させた材料の気体材料を蒸気として蓄積させることで膜を形成します。
これに対して、スパッタリングは、電気を通してイオン化させた材料成分を直接素材にぶつけて膜を形成する加工方法です。
スパッタリングは、蒸着と比較して、より高い密着性や均一性、成膜速度が得られることが特徴です。
また、スパッタリングは、真空条件での加工が必要なため、高品質な薄膜形成に適しています。一方で、蒸着はシンプルでコストが低く、大面積にも適用しやすいことが特徴です。

陽極酸化処理とアルマイト処理の違いは何ですか?

陽極酸化処理は、金属を陽極として電解液中で電流を流すことで、金属表面に酸化皮膜を形成する表面処理加工方法です。
一方、アルマイト処理は、アルミニウムを陽極として電解液中で陽極酸化処理を行い、アルミニウム表面に酸化皮膜を形成する方法です。
つまり、アルマイト処理は、陽極酸化処理の一種であると言えます。

表面処理(目的・性能別)